研究課題
前年度までの研究において、EGFR遺伝子変異陽性のすりガラス様陰影 (ground glass nodule: GGN)は増大しやすい、すなわち病理学的浸潤癌に進行しやすいことを明らかにした。一方で、EGFR、KRAS、ALK、HER2遺伝子の4つとも陰性のGGNは増大しにくかった。今年度は、特に同一患者に多発するGGNに注目して、その遺伝子的な違いを解析した。CTですりガラス成分を50%以上含むGGNを複数個もつ患者を対象とし、2mm増大の有無を評価した。また、切除された多発GGNでEGFR、KRAS、ALK、HER2遺伝子を解析した。25人の78個のGGNの内訳は2/3/4/5/7/8個=12/6/4/1/1/1人であった。観察期間中央値51ヶ月時点で、3人は全GGNが増大、8人は一部のGGNが増大、14人は全GGNが変化しなかった。多発GGNを切除されたのは5人で、各症例の遺伝子変異の組み合わせは、 (EGFR-L858R/ EGFR-L858R/ 変異なし)、 (EGFR-L858R/ EGFR-エクソン19欠失変異)、 (EGFR-L858R/ HER2/ 変異なし/ 変異なし)、(EGFR-エクソン19欠失変異/ EGFR-エクソン19挿入変異)、(変異なし/ 変異なし)であった。同一患者における多発GGNが全て増大するのは約10%にしかすぎず、また、同一患者に多発するGGNは遺伝子的に異なることが多いため、経過観察により増大の有無を見極めて個別に対応する必要があることがわかった。本研究の結果は、CT検診及び実臨床でのCT検査の普及によってますます多くのGGNが検出されることが予想される現状において、不要な外科的切除を避け、適切に経過観察するための重要な基礎的データとなる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Clinical Cancer Research
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