本研究は、申請者が米国滞在中にマウスで同定した、免疫抑制サイトカインであるインターロイキン10(IL-10)を産生する事により大腸炎を改善する事ができる、Breg細胞と呼ばれる調節性B細胞を、ヒトにおいて検証するための研究基盤を確立する事を目的とする。この目的のため、健常者、潰瘍性大腸炎患者、及びクローン病患者さんの末梢血を用いて、マウス調節性B細胞の表面マーカーであるCD39やCD93等の分子発現を、フローサイトメーターを用いて検討した。しかし、マウスBreg細胞に類似するB細胞はヒトの末梢血中には検出できなかった。また、マウスBreg細胞は未成熟段階のB細胞と考えられているが、潰瘍性大腸炎患者さんの末梢血中では、むしろより成熟したB細胞(メモリーB細胞)の増加を認めた。一方、B細胞より分化したPreg細胞と呼ばれるIL-10産生CD19+ CD27+ CD38+ 制御性形質芽細胞がヒトにおいて昨年同定されているが、未治療の潰瘍性大腸炎患者さんの末梢血中に、この制御性形質芽細胞が健常人に比較して約5倍増加している事を認めた。よって、ヒト潰瘍性大腸炎患者さんの末梢血中では、マウス型の調節性B細胞は、より分化した形質芽細胞に成熟している可能性が考えられ、未成熟段階のBreg細胞は末梢血よりむしろ脾臓等の組織に存在しているのかもしれない。この可能性を検討するため、より委細なPreg細胞特異的分子発現様式を、すでに採取しているRNAを使い解析すると共に、Preg細胞とBreg細胞の存在を脾臓摘患者さんにおいて検討予定である。
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