研究課題/領域番号 |
26893316
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
渡辺 拓也 福岡大学, 薬学部, 助教 (90509647)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | オリゴデンドロサイト / neuroligin |
研究実績の概要 |
oligodendrocyte precursor cell (OPC)と神経細胞間で構築されるシナプスの分子機構を解明するため、まずラット新生児脳から単離培養したOPCの同定を行った。単離培養したOPCはOPCのマーカー蛋白質の一つであるNG2を発現していた。また、OPCにTriiodothyronine (T3) を処置して、oligodendrocyte (OLG)への分化を誘導させると、分化誘導前では発現が認められなかったmyelin basic protein (MBP:OLGのマーカー蛋白質の一つ)の発現が認められ、一方でNG2の発現は認められなくなった。これらのことから、単離培養した細胞はOLGへ分化可能なOPCであると確認できた。 OPCが神経細胞で認められるシナプス関連タンパクを発現しているか検討する為、mRNA発現量を解析した。OPCでは、足場タンパクであるPSD-95やshank3、AMPA型グルタミン酸受容体サブユニットであるGluR1やGluR3、接着タンパクであるneuroligin(NLGN)3のmRNA発現が認められた。さらに、GluR2とGluR4、NLGN3に関してはwestern blot法においてタンパクの発現を確認できた。 パッチクランプ法を用いてOPCにおけるグルタミン酸刺激による電流応答を解析した。グルタミン酸刺激のみでは、その電流応答を取得することが出来なかった。そこで、AMPA型グルタミン酸受容体の脱感作阻害剤であるcyclotiazideを共処置するとグルタミン酸刺激による電流応答を取得することが出来た。 以上のことから、単離培養したOPCはグルタミン酸を介したシナプスを形成可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当年度における到達目標は、OPCと神経細胞間のシナプスをin vitroの実験系で確立し、シナプス形成能とシナプス伝達能におけるNLGN3の役割を検討することであった。当年度の実績では単離培養したOPCがグルタミン酸に応答することは確認できた。また、OPCでのNLGN3のknockdownは未検討であるが、NLGN3強制発現HEK細胞においてNLGN3を標的としたshRNAによるknockdownを検討し、有効なshRNA配列を同定した。当年度の実績は、到達目標には達していないが、目標に対してある程度の進捗を示しているため、達成度はやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
単離培養したOPCのNLGN3発現を調節し、グルタミン酸に対する応答を検討する。変異NLGN3の発現系構築では、NLGN3強制発現用プラスミドをすでに作製済みである為、プラスミドに変異を入れて作製を行う。また、それと並行して、神経細胞とOPCの共培養系におけるシナプス構築方法を確立する。 脊髄後根神経節とOPCのin vitro共培養系では、グルタミン酸を介した小胞性伝達が報告されている。脳由来の神経細胞において、OPCとのシナプス構築が困難であると判断された場合は、脊髄後根神経節との共培養系でのNLGN3の機能の検討を試みる。
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