これまでの検討によりOligodendrocyte precursor cell (OPC)にneuroligin3(NLGN3)が発現していることを確認した。そこで、OPCと神経細胞間で構築されるシナプスでのNLGN3の役割を解明するため、OPC上のNLGN3発現調節の方策を検討した。NLGN3には4つのスプライスバリアント(A1A2、A1、A2、delta)が存在することが報告されており、申請者はラット脳から2種のスプライスバリアント(A2、delta)をクローニングした。また、NLGN3を標的とするshRNA(NLGN3-shRNA)の作製を行った。HEK細胞にNLGN3プラスミド(A2ならびにdelta)と同時にNLGN3-shRNAの導入を行い、Western blot法にて解析した。NLGN3 A2とNLGN3 deltaは共に想定の分子量の位置に発現し、NLGN3-shRNAはその発現量を減少させた。また、OPCから抽出したタンパクを同時にwestern blotした際にNLGN3 A2と同程度の位置にバンドが検出されたことから、OPCにはNLGN3 A2もしくはA1が優位に発現していることが示唆された。 上記のプラスミドをOPCに導入することを試みた。プラスミドにはGFPが組み込まれているため、GFP発現で導入効率を評価した。Lipofectamine2000ならびに3000での導入では、全く蛍光を発するOPCは観察されなかった。次にエレクトロポレーションによる導入を行った結果、蛍光を発するOPCがわずかに認められた。 脳由来の神経細胞とOPCの共培養を試みたが、シナプス構築の評価は困難であった。そこで、脊髄後根神経節とOPCの共培養を検討した。OPCは脊髄後根神経節との共培養下で分化様の形態変化が認められた。
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