本研究の目的は、胃切除術を受けた胃がん患者の退院後の生活を支援する具体的看護援助の検討と、ICTを活用した自己管理支援ツールの開発に必要な基礎データを収集することである。胃切除術後患者は、ダンピング症状や体重減少、下痢など様々な症状に悩まされながら、食生活を管理してセルフケアを実行しなければならない。特に医療者の支援が必要とされる時期の患者の実態を明らかにするために、手術後から3ヶ月までのセルフケア能力、術後機能障害、身体的症状体験、抑うつ症状、基本属性、食行動、情報収集行動などに関する質問紙を用い、入院中、術後2週間、1.5ヶ月、3ヶ月に自記式質問紙調査を行った。 平成27年度は主にデータ収集を行った。3施設から胃切除術後患者74名の協力が得られ調査を開始したが、3か月後まで継続して調査を実施できた対象者は65名であった。男性が6割、平均年齢は66.4歳、胃全摘2割、胃亜全摘8割であり、ステージⅠが8割であった。入院中よりも術後2週間でセルフケア能力の低下、症状の悪化、うつ傾向の悪化がみられた。また、3ヶ月後になると食事調整に対する実践ができなくなる人が増加し、実践できないと術後機能障害の程度が高い傾向であった。これらの改善のために入院中からの継続的かつタイムリーなサポートの必要性が示唆され、ICT活用が有効な支援方法の一助になると考えられる。28年度末にデータ収集が終了したところであり、今後詳細な分析を進めて必要な看護支援を検討して、自己管理支援ツールの開発に繋げる。研究成果の詳細については、研究成果報告書で報告するとともに、今年度中に論文化する予定である。
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