研究課題/領域番号 |
26893328
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
中島 正裕 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 助教 (70738103)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | B細胞 / 特異的抗体 / 肺炎球菌 |
研究実績の概要 |
平成26年度においては、マウスのB細胞が大腸菌だけでなく、他の病原体細菌を貪食することができるかをまず検証し、可能ならば貪食B細胞を分取することを予定していた。病原体細菌としては肺炎球菌を候補として挙げた。 pHrodo試薬やfluoresceinにて標識した肺炎球菌を用いて、マウス肝臓・脾臓のB細胞がin vitroにてこれらを貪食できるかを調べたが、単にB細胞と標識肺炎球菌を混ぜて培養しただけでは殆どB細胞の貪食を認めることができなかった。しかし、上記の培養に補体や別のマウスから得られた特異的抗体を添加すると、肺炎球菌の貪食を明らかに認めることができた。貪食像は電子顕微鏡にても捉えることができた。 脾臓B細胞を補体の存在下にて標識肺炎球菌と培養すると、肺炎球菌を細胞表面に結合したり、細胞内に取り込んだB細胞集団が得られる。これらを分取・培養すると、肺炎球菌に特異的なIgM抗体を産生した。別の正常マウス個体に投与すると、マウス体内においても特異的IgM抗体が産生された。これらのマウスは、肺炎球菌の死菌を投与したマウスと同様に肺炎球菌に対する抵抗性を獲得することができた。さらにB細胞ノックアウトマウスに投与しても肺炎球菌に対する抵抗性を獲得したことが判明した。 これらの所見は、in vitroにて肺炎球菌と共培養したマウスB細胞は、マクロファージなどの他の貪食細胞やT細胞には依存しないで肺炎球菌に特異的な抗体を産生することを示唆する。つまり、Th2抗原として知られる肺炎球菌は、少なくとも他の貪食細胞に依存することなくB細胞のみに作用して特異的抗体を産生させることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の申請時における研究計画と比較すると、平成26年度は概ね予定どおりであり、またここまでは予測していたとおりの結果が得られている。しかし、本課題における最も核心的な問題点である「病原体を貪食したB細胞がそれ自体で特異的抗体を産生するか」については結果を出せていない。これは(FITC標識)肺炎球菌を貪食したB細胞を分取するためには、現状ではphagolysosomeを染色する試薬を用いざるを得ないが、自験例では肝臓B細胞を用いないと本集団を分取できなかったためである。そのためには脾臓からB細胞を分取するのと比べると約20倍のマウスを要することとなり、セルソーターを用いた検討に踏み切るために時間を消費した。
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今後の研究の推進方策 |
最近、ようやくセルソーターの操作に慣れてきたため、肺炎球菌を貪食した肝臓B細胞を十分量だけ分取することに目途がついたと思われる。但し、B細胞における貪食集団の分取は、補体や血清の添加などの対処をもってしても、割合が低いゆえにサンプル数の確保が困難であり、本研究課題を進行しにくくさせている。技術的な対応策として、申請者はpHrodo標識肺炎球菌の作成に改善の余地がある可能性を見出した。つまりオプソニン化された場合、肺炎球菌は生菌の方が死菌よりも貪食されやすい傾向があり、ソーターでの分取にあたっては、なるべく生菌を用いた方が効率的であると思われる。
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