平成27年度においては、肺炎球菌を貪食したB細胞が有する性質を調べた。 pHrodo succimidyl esterは酸性環境下において蛍光発色するため、本試薬にて細菌を標識し、これを好中球などに貪食させれば、貪食細胞のphagolysosomeにて発色し、細菌を貪食した細胞の同定が可能となる。本試薬にて標識された肺炎球菌を予め磁気的に分離したマウス肝臓B細胞と培養し、セルソーターにてpHrodo-streptococcus pneumoniae(+)IgM(+)cells(以下、貪食B細胞と省略)とpHrodo-streptococcus pneumoniae(-)IgM(+)cells(以下、非貪食B細胞と省略)を分取した。培養の際には、オプソニン化のため肺炎球菌を投与したマウスの血清を添加した。 貪食B細胞は5日間培養すると、肺炎球菌の莢膜多糖類(PPS)に対するIgM抗体を産生したが、肺炎球菌表面タンパク質(PspA)に対するIgM抗体は産生しなかった。非貪食B細胞はいずれも産生しなかったが、非特異的な抗体は貪食細胞と同程度に産生した。また貪食B細胞をC57BL/6マウスに移入すると、低量ながらanti-PPS IgMとanti-PspA IgGがそれぞれ移入1週間後と2週間後をピークとして産生されるのが確認された。 貪食B細胞をC57BL/6マウスとB細胞欠損(IgH knockout)マウスに移入し、2週間後に致死量の肺炎球菌を投与し、予後に与える影響を調べたが、肺炎球菌を貪食していないB細胞を投与した群およびコントロール群と比べて、両者のマウスともに有意な生存率の改善はみられなかった。
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