研究課題
原子力事故後の緊急作業では、平常時の線量限度を超えて被ばくする可能性がある。このような場合には、個人の体格や行動調査に基づいた詳細な線量評価が要求される。本研究では、甲状腺へ局所的に大線量を与えるおそれのあるI-131を対象として、昨年度までに甲状腺周辺組織の組織厚等を考慮した甲状腺残留量の評価手法を検討した。本年度は、安定ヨウ素剤服用を含む摂取シナリオに基づく線量再構築手法に関して、以下の項目を実施した。1.安定ヨウ素剤服用時の体内動態モデルの開発国際放射線防護委員会(ICRP)の刊行物に記載されている従来のヨウ素の体内動態モデルを基に、過剰のヨウ素摂取によって甲状腺ホルモンの合成が阻害されるWolff-Chaikoff効果を新たに考慮し、安定ヨウ素の服用による放射性ヨウ素の甲状腺への取り込み抑制を再現した。日本人を対象として評価した放射性ヨウ素の急性摂取に対する甲状腺取り込み抑制効果は、安定ヨウ素剤服用のタイミングによって異なり、2日前の服用で50%、1日前から直前の服用で80%以上であった。また、放射性ヨウ素を摂取した後に遅れて安定ヨウ素剤を服用した場合には効果が急激に減少し、12時間後で20%、1日後で7%未満となった。2.福島第一原子力発電所事故後の摂取シナリオに対する応用前述の結果より、安定ヨウ素剤服用による効果の持続時間は数日以内であることが示唆された。しかし、原子力事故後の放射性ヨウ素の摂取はそれ以上に続く可能性がある。福島第一原子力発電所事故後の2011年3月13日から22日までの10日間における典型的な摂取シナリオを例として、安定ヨウ素剤の服用日が異なる場合の効果を計算した結果、15-45%の大きな差が生じることが明らかとなった。本研究での成果は、原子力事故後の緊急時作業者の摂取シナリオから、安定ヨウ素剤服用の効果を考慮した線量再構築に適用できるものと期待される。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Radiation Protection Dosimetry
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10.1093/rpd/ncw001