本研究では、高線量の放射線によるヒト造血幹細胞への障害をヒト間葉系幹細胞がもたらす防護効果の視点から評価するための新しいヒト化マウスモデルを構築することを目的とし、ヒト造血幹細胞とヒト間葉系幹細胞を同時に移植することにより、超免疫不全マウス(NOG)の骨髄内にヒトの造血環境を再構築することを目指した。 平成27年度には、ヒト骨髄単核細胞から単離した造血幹細胞と間葉系幹細胞をNOGマウスの下肢大腿骨内に注入し、末梢血中のヒト造血細胞をFACS解析により測定することでマウス骨髄内でのヒト造血の成否を確認した。直接骨髄内へ細胞注入するため、尾静脈からの移植に比べて早期にヒト造血が成立するものと予想していたが、予想に反して末梢血中のヒト造血細胞のキメリズムは上がっていない。そのため、何匹かのマウスをサンプリング調査したところ、末梢血中にヒト造血細胞が認められない個体であっても、脾臓、及び骨髄内には複数のヒト細胞が存在していることを確認した。そこで残りのマウスのヒト造血細胞のキメリズム測定を継続して行い、ヒト化NOGマウスへの放射線照射と骨髄からのヒト造血幹細胞の単離を行う準備をしている。 一方で、in vitroにおいて間葉系幹細胞の造血幹細胞に対する放射線障害防護効果を検討するため、CD34陽性造血幹細胞への放射線照射を行い、間葉系幹細胞との共培養、および間葉系幹細胞の培養上清から精製したエキソソームを培養液に添加することで造血幹細胞への影響が認められるかを、コロニーアッセイ等を用いて比較した。
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