研究課題
樹立した内皮細胞/壁細胞を可視化できるTg(fli1a:mCherry);(pdgfr-β:GFP)を用いて、まず後脳血管への壁細胞動員を解析した。その結果、壁細胞は脳底血管を構成する内皮細胞周囲で生じ、連続する内皮細胞に沿って脳内血管へと移動し増殖することにより動員されことが明らかになった。この時、壁細胞は内皮細胞同士の細胞間接着部位に沿って突起を伸ばし移動する様子が観察され、内皮細胞間接着部位が壁細胞が移動する際の目印になっている可能性が示唆された。次に体幹部の血管について解析を進めたところ、大動脈や動脈節管血管周囲で壁細胞が出現することが分かった。しかし、幼生に至る受精後5日目になっても後主静脈や尾静脈などの静脈血管周囲には壁細胞は観察されなかった。この結果は、静脈内皮細胞に比べ“動脈内皮細胞周囲に壁細胞が動員されやすい”ことを示唆する。また、ゼブラフィッシュにおける壁細胞の起源を解明するため、TgBAC(pdgfrb:Gal4FF):Tg(UAS:loxP-mCherry-loxP-mVenus)を樹立した。このTgラインと、神経堤細胞特異的プロモーター(sox10)または中胚葉特異的プロモーター(tbx6)下でCreを発現するTgラインとを交配することにより、神経堤細胞または中胚葉に由来する壁細胞をmVenusにより可視化し、系譜解析を行った。その結果、体幹部の血管(大動脈や動脈節管血管周囲)および後脳血管に出現する壁細胞はTg(tbx6:Cre)と交配時にmVenus陽性となることから中胚葉に由来することが明らかになった。一方、頭部腹側の血管(大動脈弓, 鰓弓動脈)に出現する壁細胞はTg(sox10:Cre)と交配時にmVenus陽性となることから神経堤細胞に由来することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
当初の年次計画通り、Tg(fli1a:mCherry);(pdgfr-β:GFP)を用いることにより、ゼブラフィッシュにおいて壁細胞がいつ、どこで出現し、どのように壁細胞により覆われる領域が拡大されていくかが明らかになった。さらに、壁細胞の起源を明らかにするためCre-loxシステムに基づいた細胞系譜解析が可能なTgラインを樹立し、神経堤細胞および中胚葉に由来する壁細胞の分布が明らかになった。
当初の年次計画通りに研究を推進する。具体的には、これまでの解析から壁細胞の分化が動脈内皮細胞の近傍で誘導されるという興味深い知見が得られた。この結果は、動脈内皮細胞が接触依存的に壁細胞の分化を制御している可能性を示唆しており、本研究ではこの仮説の検証を行う。特に、細胞間接着依存的に活性化するNotchシグナルに着目し、壁細胞分化におけるNotchシグナルの関与をモルフォリノオリゴによる遺伝子ノックダウンや阻害剤(DAPT)または活性化体の導入(Notchの細胞内ドメインの過剰発現)により検証する。さらに、動脈特異的に発現する遺伝子をHiSeq 2500を用いたRNAシースエンスにより抽出し、抽出した新規候補因子に関して壁細胞分化への関与をモルフォリノオリゴや遺伝子改変個体の作成、阻害剤等を用いることにより検証する。さらに、中枢の血管における壁細胞の動員機構を観察した結果、脳底動脈周囲で壁細胞が発生したのち、壁細胞による覆いの無い血管内皮だけからなる血管に向かって移行する様子が観察された。そこで、壁細胞の遊走制御に関わる因子として予想されるEphrin B2(1型膜タンパク質)やS1P3受容体(7回膜貫通型受容体)に着目し、これらシグナル分子が中枢の血管における壁細胞の遊走、動員に関与するかモルフォリノオリゴや阻害剤等を用いて検討する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
Nature Communication
巻: 6 ページ: 1-11
10.1038/ncomms7725
Development
巻: 142 ページ: 497-509
10.1242/dev.115576
Developmental Cell
巻: 32 ページ: 109-122
10.1016/j.devcel.2014
Developmental Biology
巻: 393 ページ: 10-23
10.1016/j.ydbio.2014.06.015.