本研究では、現代の若年結核患者において今後の流行が懸念されている、結核菌北京型株新興型の実態解明を行うことで、遺伝系統に対応した効率的な結核対策へ知見を提供すること目的としている。 結核菌は、検出される地域によって優先する遺伝系統が異なる傾向にある。これまでの報告によると、わが国でも臨床分離株の約8割は北京型株であり、解析対象とした結核菌が北京型株か非北京型株であるかを検索することで、国内感染か、海外での感染であるかを推定することが可能であり、海外からの留学生・労働者が増えている近年では、感染源が国内か国外かを推定することは重要である。 平成26年度は、結核菌の遺伝系統解析・遺伝子型別および患者情報の収集に取り組んだ。 遺伝系統解析についてはPCR法によりRv0679c遺伝子上の一塩基多型(SNP)を検出し、結核菌北京型株の検索を進めた。現在、60株の解析を終えており、平成27年度に引き続き解析を続ける。対象とする若年者結核患者由来177株すべての検索終了後、新興型を含む5つの遺伝系統群への細分類に取り組む(平成27年度に実施する)。 遺伝型別は、平成24~26年に大阪市内で新登録となった40歳未満の結核患者から分離された結核菌177株について、JATA(12)-VNTR法による型別を終えた。105株については、より詳細な型別を行うための追加12領域の解析を実施した。残りの72株については平成27年度に実施する。解析対象株については、平成26年度登録株が遅れて搬入されることもあるため、今後増加する可能性がある。 患者情報の収集については、統計解析に必要な項目のリストアップおよび個人情報保護のための対策について保健所との打ち合わせを行った。現在、情報集約のためのデータベースの構築作業中である。
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