近年、飼育器具の向上により熱帯魚や海水魚などを一般家庭で飼育することが容易になった。しかし、感染症の治療方法は発展が乏しく、養殖魚における対処方法に準じた方法が紹介されているだけである。そこで本研究では、代表的な観賞魚における病気の治療実践及び市販されている薬の有効性について検討した。熱帯性海水魚では白点病について検討した。5匹のデバスズメダイChromis viridisから離脱した白点虫Cryptocaryon irritansを薬剤入りの海水にて25℃で培養し、24および48時間後に放出され仔虫セロントの運動性について位相差顕微鏡で観察評価した。薬剤は二酸化塩素製剤(グリーンFクリアー、日本動物薬品)、マラカイトグリーン製剤(スーサンエース、日本醗酵飼料)、過酸化水素製剤(オキシドール、健栄製薬)、イソジン製剤(イソジンガーグル液7%、Meiji Seikaファルマ)を用いた。マラカイトグリーンと二酸化塩素、過酸化水素、イソジンはそれぞれ2、100、200(200ppm未満は検討せず)、3.13ppmでセロント運動能を弱めた。本結果をもとにルリヤッコCentropyge bispinosusを150ppm過酸化水素で薬浴したところ、13日で完全に駆除することができた。観賞魚として人気の高いポリプテルス類はマクロギロダクチルス・ポリプテリMacrogyrodactylus polypteriの寄生を受けやすい。これに感染したポリプテルス類をトリクロルホン・メチレンブルー・アクリノール製剤で10分間の薬浴(トリクロルホン濃度160ppm)を行なったところ、急性毒性を呈することなく駆除に成功した。淡水魚におけるピスキノウーディニウムの感染についてはメチレンブルーの有効性を示唆した。また、体表面の診察方法としてカバースリップ(プラスチック製カバーガラス)を提案した。
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