研究目的 閉塞型睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome : OSAS)は、睡眠時に断続的に無呼吸を繰り返すことにより、睡眠をとったにもかかわらず、日中の傾眠を引き起こし、社会的にも問題になっている疾患である。当院では、精神科や耳鼻科から多くのOSAS患者が当科に紹介され、口腔内装置の製作依頼が急増している。私は、2008~2010年度科学研究費補助金(奨励研究)に当科で製作しているOSAS用口腔内装置とその製作時に使用する咬合採得器具(バイトキーパー)の開発について採択された。本研究の目的は、これまでの奨励研究で開発したバイトキーパーと新たにパルスオキシータを併用した新しい咬合採得法を考案し、より効果的な口腔内装置を容易に製作して、臨床応用することである。 研究方法 健常者の血中酸素飽和度(%SpO2)は概ね96~99%SpO2の範囲と言われており、それ以下になると睡眠時無呼吸症候群と診断され、SpO2が90%を切る場合、呼吸不全(急性)と診断される。また、文献などから顎間固定距離は5.0~10.0mm以内、前方固定距離は最前方距離の50~80%以内が効果的であると報告されている。①歯科診察ユニットの上で、患者さんを仰臥位にして、パルスオキシータを使いながら、96~99%SpO2の範囲になるようにバイトキーパーを用いて、下顎を前方に誘導し、前方固定距離は最前方距離の50~80%以内になるように違和感のない下顎位を決定した。 ②①で得られたパルスオキシメータのデータとその時のバイトキーパーで得られて下顎位のデータをパソコンに保存し、そのデータ管理、付属のソフトウェアで解析を行った。 ③9月には、その結果をまとめ、日本歯科技工学会に発表した。 研究成果 本研究は、患者の血中酸素飽和度(%SpO2)は概ね96~99%SpO2の範囲になるような下顎位の決定方法であり、OSAS用口腔内装置の製作時に必要不可欠な方法である。つまり、患者に優しい咬合採得方法であり、臨床応用への可能性が大いに期待できることが判った。
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