研究概要 |
【^(138)La】の放射壊変を利用したLa-Ce,La-Baの2つの地学時計の開発・確立および、これらを用いた地球の化学的進化の解明が本研究の中心的な課題である。まとめは、次下の通り。 1.La-Ce法:(1)Mustikkamakiペグマタイト,Amitsog片麻岩についてLa-Ce年代,Sm-Nd年代を求めた。La-Ce年代とSm-Nd年代が一致するとして算出したλβ【^(138)La】は2.94×【10^(-12)】【yr^(-1)】である。計数法の値に比し、28%高い。(2)月高地の試料のREEパターン,Ce同位体比の研究より、月の初期における水の存在の可能性を指摘した。(3)地球最古(38億年)の岩石であるAmitsoq片麻岩についてのCe,Nd同位体比の研究より、地球の初期においてREEの相対的な存在度が隕石とほぼ同じであったことを明らかにした。(4)地球上の代表的な玄武岩および大陸地殻の酸性岩のCe,Nd同位体比による研究を行った。そして、大陸地殻の酸性岩はコンドライト的または液体型的なREEパターンの物質から生じたことを示した。(5)マンガン団塊のCeは海嶺などにおける火山活動により供給され、Ndは大陸地殻からの供給の寄与が大きいことをCe,Nd同位体比のデータより明らかにした。 2.La-Ba法:La-Ba年代測定法が、モナズ石,カツレン石,リンカイ石などのLa/Ba比の大きな鉱物について実用可能であることを実証した。Korsnas galena mineとMustikkmakiペグマナイトの試料についてのLa-Ba年代とSm-Nd年代の比較から、λEC【^(138)La】=4.15×【10^(-12)】【yr^(-1)】を算出した。計数法の値よりも7%低い。 3.Re-Os法:ICP質量分析計によるOs同位体比測定方法を開発した。鉄隕石の年代(45億年)に検討の余地があるという結論に達した。好適な年代測定法がなかった硫化物にしRe-Os法を適用し生成年代を求めた。 4.Rb-Sr法:ダイオジェナイトについて、ユークライトより1億年若い44億年のRb-Sr年代を得た。
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