研究概要 |
結晶成長機構を解明するための糸口をみつけるため、ロッセル塩飽和溶液の比重,光学的分極率,プロトン共鳴法による溶液中のプロトン濃度,帯磁率,拡散係数,熱伝導度,粘性係数といった物理量と、結晶成長時に生じる濃度勾配,温度勾配,超遠心機中で生じる濃度分布などを精密に測定した。この一連の測定でロッセル塩を用いたのは、溶解度と晶癖がpHによらず、また、この結晶が強誘電体で応用上の興味も有ったからである。この研究から、ロッセル塩では『成長単元』は 単結晶的構造をもった単分子であることを確認した。 一方、KDP(【KH_2】【PO_4】)、ADP(【NH_4】【H_2】【PO_4】)の飽和溶液の比重はpHによって大きく変わる。また、これらの結晶の晶癖は母液のpHと母液中の三価の金属イオン含有量によって変化する。この晶癖変化の原因として、(1)母液中のイオン活性度がpHによって変化する。(2)母液の構造がpHによって変わる、という二通りの考え方が成立する。この点を解明するため、KDP,ADPの飽和溶液の赤外吸収スペクトルを測定した。ここで興味深いのはKDP溶液では990【cm^(-1)】に、吸収強度がpHに依存するピークが見付った。これは【PO_4】基とHイオンの結合に因るものとして説明される。これと類似な現象がADP溶液でもみつかった。このことからpHによって、溶液構造に変化が生じることを確認し、固液界面の構造について研究をすすめた。 結晶の固液界面の幾何学的な構造を総括的に知るために、界面の顕微鏡像に二次元フーリエ変換を施し、界面に存在する空間的ゆらぎと時間的ゆらぎとを定量的に評価しつつある。
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