本年度の計画は、吸着ジシラン(【Si_2】【H_6】)の光解離による基板上でのシリコン(Si)核形成法を確立し、Siの選択成長を実現させることであった。 この計画はほぼ予定通りに進展した。本年度はガスピュリファイヤー(オークスフォード社製)を購入し、エキシマレーザー光のガスの寿命を大幅に延ばした。 その結果レーザーパワーの安定性が増し、実験の再現性が高くなった。 【Si_2】【H_6】を用いて低温レーザーCVDを行なうと300℃以下で【Si_2】【H_6】は熱分解反応が殆ど起こらず、光分解によって膜成長が進む。 従って、基板上の光照射部分だけに膜形成できる可能性がある。 しかし実際には、気相中で光分解した【Si_2】【H_6】ラジカルは等方的に拡散するため、レーザー光照射部以外にも膜形成が進むことは避けられない。光照射部分における核形成確率とその後の膜成長速度を大幅に増大させる工夫が必要である。 そのためここでは、ArFエキシマレーザー光(193nm)をマスクを通して石英基板上に照射し、反応ガスに接する側の石英基板表面において光照射表面だけに吸着【Si_2】【H_6】分子の表面光化学反応が起こり核形成がはじまる。 この核は強い光励起を受けるので急速に核成長が進む。 Si薄膜の形成が始まると、吸着【Si_2】【H_6】の表面反応は更に加速的に進行する。 これにより、Siの選択デポジションによる鮮明な転写パターンが得られた。 この方法は、従来用いられていたArレーザーを集光して、局所加熱表面にパターンを直接描画する方法と異なり、純粋に光化学反応を用いた一括パターン転写を世界で初めて実現したものである。
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