逆バイアステーターピンチ方式によって発生したFRCプラズマは多極磁界によって安定化されることが4極磁界を用いた実験で明らかにされ、理論的研究によって得られた不安定抑制に必要な多極磁界の強さのしきい値と比較された。その値がプラズマ半径、回転角速度に比例すること、プラズマ密度の平方根に比例することについては理論と実験の結果はよい一致を示すことがわかった。ただし、その絶対値については理論値は実験値の約3倍の大きさとなる。なお、この理論は磁気流体力学に基づいた理論で改良が必要である。また、実験において使用した測定法は磁気プローブおよびレーザー干渉計を用いた方法であり、これらの方法はプラズマの回転速度を正しく推定することは困難である。プラズマのイオン温度、回転速度の測定は従来はプラズマ中に含まれる不純物イオンからの発光スペクトルのドップラープロフィルの測定によって行なっていたが、測定誤差が大きいこと、不純物イオンとプラズマの水素イオンとが同じ速度で回転しているか否かということなどが問題である。そこで、新しく開発したパルス水素原子ビームを用いたビームプローブ分光法によって、水素イオンの速度分布関数を直接測定することを試みた。その結果、FRCプラズマは磁気容器中に移送された後に回転角速度が次第に増大し、その回転エネルギーがプラズマ柱の表面付近で約10eVに達した頃に回転不安定が始まることが明らかにされた。一方、理論的研究においては、数値計算により、回転不安定抑制に必要な程度の多極磁界を印加しても、多極磁界自身によるFRCプラズマの平衡状態の変化は大きくないことが確認されている。現在、有限ラーマー半径効果がFRCプラズマの安定化に及ぼす影響を取り入れた理論的考察を行なっている。
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