セラミックス材料の強度と応力腐食を支配する粒界の挙動を解明するために、粒界の構造と類似の非晶質について研究を進め、次のような成果を得た。 (1)【Si_3】【N_4】などの非酸化物の焼結助剤として用いられる希土類高融点酸化物を多量に含む系のガラス化領域を調べ、共晶組成で非晶質化し易いこととその理由を明らかにするとともに、変形温度、結晶化温度等を調べた。 (2)【Si_3】【N_4】-Si【O_2】-CaO系ガラスを作成し、Si【O_2】を【Si_3】【N_4】で置換することにより、粘度が上昇し、ガラス化が容易になること、密度、ガラス転移温度、ビッカース硬度は窒素含有量の増加に伴って増大すること、熱膨張率は低下することを明らかにした。 (3)アルカリ含有量の少ないガラス中で、酸化鉄を多量に含むガラスは比較的低温でガラス化が可能であり、結晶化も可能であることを明らかにし、ガラス化領域と化学耐久性の関連やガラス構造について調べた。 (4)通常の状態ではガラス化しない組成も、特殊な条件、例えば、粒界のような条件になると非晶質化が可能となるので、スパッタ法により従来のガラス化領域を越える組成、例えば、Ti【O_2】-Si【O_2】、Zr【O_2】-Si【O_2】、 【Al_2】【O_3】-Si【O_2】などの系の非晶質膜を作成し、陽イオンの配位数などの構造と物性について調べ、結晶から予想されない配位数を取る場合があることを見出した。 (5)無機ガラスを対象として、原子間結合力を実験的に求める方法を確立し、複雑な組成と構造を持つ無機材料の強度および応力腐食反応を取り扱うために不可欠な化学結合力を系統的に評価した。 (6)非晶質の弾性定数と破壊靭性について、化学組成、配位数、結晶化、塑性変形、不均質性などの影響を実験値をもとに調べ、強靭性化には弾性定数をあまり変えずに表面エネルギーを大きくできる転移現象などの特殊条件が必要なことを明らかにした。 さらに応力腐食特性を弾塑性との関連で知るために、低速負似条件下における実験データを得た。
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