研究概要 |
タバコ葉緑体DNAに支配される遺伝子の位置をDNA上に定め、それを含むクローンからDNAを単離し、その塩基配列を決定した。ATPaseのα、β、εサブユニット遺伝子の全塩基配列を決定した。大腸菌のα、β、εサブユニットと比べそれぞれ54%、62%、27%の相同性を示した。またαサブユニット遺伝子の近傍に位置するグリシン(UCC)、アルギニン(UCU)、セリン(GCU)、グルタミン(UUG)のtRNA遺伝子の全塩基配列を決定した。そのうちグリシンtRNAのDステムに691塩基対のイントロンが存在することが、本研究ではじめてあきらかになった。さらに逆位反復配列の境界領域の塩基配列を決定し、はじめて境界点を正確に同定した。 イネの葉緑体DNAの単離は困難とされていたが、その単離にはじめて成功し、それを用いて種々の制限酵素による電気泳動パターンを調べるとともに、同DNAが130kbの長さであることを明らかにした。さらにSal【I】,Pst【I】,Pvu【II】による断片の環状DNAの物理地図を作製した。ついでRubisCOのLS、ATPaseのα、βサブユニット、チトクロームf、32KDタンパク、23S、16SリボソームRNAの遺伝子などの位置をタバコ遺伝子をブローブとしてサザン法を用いて物理地図上に定めた。またイネからの葉緑体DNA単離は困難なので、イネ葉緑体DNAのBam Hl,Pst【I】,Hind【III】などの制限酵素断片をpBR322やpUC8などのプラスミドにクローニングした。これにより必要なDNA断片を容易に得ることが可能となり、位置が決定されているそれぞれの遺伝子の塩基配列の決定も出来るようになった。 LSおよび32KDタンパクの遺伝子発現に関し、葉緑体中のmRNAの約1/4が翻訳されない形で存在することを見いだした。これは翻訳段階での発現調節機構の存在を示唆するものである。
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