研究概要 |
種々の昆虫ウイルスと樹立細胞株を取得して、in vitroで増殖する系を捜したところ、カイコ核多角体病ウイルス(NPV)とBin-N細胞の系、およびハスモンヨトウNPVとCLS79,SF21AE,TN308細胞の系が見つかり、以下の実験を行った。 これらの増殖する系を用い、ウイルスの定量とクローニングのためのプラーク法を検討し、シープラークアガロースを用いるプラーク法を確立した。この方法により、野外分離株より、多数のNPVをクローンしたところ、樹立細胞に対する宿主特異性までも異なる多くのクローン株が得られた。これらのウイルス株を増殖し、ウイルス粒子等を精製し、理化学的性状を明らかにすることができた。 カイコNPVを感染後、蛋白質(特に多角体蛋白質)の変動を詳しく調べたところ、多角体蛋白質は感染末期に急激に合成されることが明らかとなった。すなわち、in vivoでは感染4日目より、in vitroでは感染48時間より多量に合成され、何らかの発現のコントロールを受けていた。また、外来遺伝子を挿入した場合も同様のコントロールを受いることが明らかとなった。 ハスモンヨトウルNPVおよびカイコNPVの多角体遺伝子部位を、感染末期の脂肪体より抽出したmRNAを用い、合成されたcDNAをプローブとして検索同定した。さらに、プラスミドにクローニングし、塩基配列を明らかにし、プロモーターと発現の関連についてディスカッションした。 ウイルス粒子より安定な形でウイルスDNAを抽出する方法を確立し、カルシウム沈殿法により細胞核内ヘトランスフェクションすることが可能となり、外来遺伝子の挿入法が確立された。 ベクターとしてのカイコNPVのウイルス粒子の熱安定性や細胞レベルでの増殖を明らかにし、有用な発現ベクターであることを示した。
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