研究概要 |
本研究では、細胞工学および遺伝子工学技術を用いることによって免疫系の統御に重要な役割を担っている抑制T細胞抗原レセプターおよび抑制機能を伝達する情報伝達分子の機構を解明するために計画された。 この研究から得られた最も重要な事は次のように要約されよう。 1.抑制T細胞が認識する抗原分子上のエピトープは限定されていて、抑制系に属する細胞群はそれを認識する(これを調節系エピトープと呼ぶ)) 2.抗Id陽性抑制T細胞抗原レセプターは外来抗原の調節系エピトープと相似の抗原構造を構築し、それが内部抗原として機能する。とくにKLH特異的抗Id抑制T細胞ハイブリドーマを用い、イ)その細胞表面上に"KLH様"抗原快定基が表現されていること。ロ)抗KLH抗体の中に内部抗原と反応しうるものが存在すること。ハ)その抗体は抑制系を刺激し抑制を誘導できること。ニ)キメラマウスを用いた実験から内部抗原は抗原レセプターのクロノタイプであること。ホ)抗IdT細胞ハイブリドーマを免疫して作成したラット抗体はKLH結合活性を持ち、同時にKLH特異的遺伝的拘束性をもつ抑制活性を示した。 3.抗Id抑制ハイブリドーマが産生する抑制因子は分子量30KD,pI6.0〜6.1で逆相カラムでも約1/3の活性を保持し、単一ピークとして検出できた。 4.抑制T細胞レセプター遺伝子のクロン化、塩基配列の快定を行なった結果、抑制T細胞はα鎖遺伝子が活性型のレセプター遺伝子として発現されていたが、β鎖遺伝子は欠失し、γ鎖遺伝子の発現も通常の方法では認められなかった。したがって、抑制T細胞はキラーやヘルパーT細胞と異なった新らしいレセプター構成をしていることが示唆された。
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