研究概要 |
わが国の医療保障は、医療保険に基盤を持ち、多種多様な健康保険組合が存在している。その中で、国庫補助率が低く、自主性の高い健康保険組合について、全国的な規模での調査を行うことによって、「医療保険の成立要因」を明らかにしたいと考えた。 調査対象は健康保険組合連合会に加盟し、昭和49年度から昭和56年度の8年間にわたって、継続して収支決算書が報告されている1,570の健康保険組合である。 まず最初に、健康保険組合の特性を明らかにし得る指標を明らかにする目的で、収支決算書に記載されている各数値について検討した。健康保険組合の構成因子を代表する9つの指標と保健活動状況を代表する4つの指標、医療費支出の状況を代表する6つの指標に、経常収支の指標を加えて総計20の指標について、8年間の平均値を各健康保険組合の代表値として、各指標間の関連を相関係数行列及び経常収支を基準変数とした場合の重回帰式を作成した。 その結果、健康保険組合連合会自体の特性を明らかにし得る指標を確定し得ると同時に、各指標間の関連を明らかにし得た。また、健康保険組合の構造的及び運営上の特性を、これらの指標によって説明し得ることを明らかにした。 さらに、収支決算の内容によって分類した「財政窮迫組合」と「優良組合」とについて、これら指標を用いて、両群の特性を明らかにした。 これらの調査結果により、財政収支に最も影響力の大きい指標として被保険者数と事業所別の被保険者の平均年令との2つの指標について焦点を絞って、総合健康保険組合に例を取って検討した。 これらの結果から、財政事情に関連を持つ構造上及び運営上の問題点を指摘し得た。
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