研究概要 |
環境毒性物質の中、有機塩素化物が、ポルフィリン蓄積及びヘム生成の酵素障害をおこし、これらが環境暴露のよい生化学的指標になる。 今回は次の新しい研究成果を得た。 1.有機塩素化物の毒性並びに系を異にするマウスへの反応性の違い:マウスC57BL/6及びddYに3,4,5,3′,4′,5′-HCBを経口投与したところ、前者ではポルフィリンの著しい肝蓄積を認め、後者では認めなかった。またウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素(UroD)の阻害が前者で強く認め、ddYでは認めなかった。このことは同じ構造の化学物質でもその生体反応が系により異なることを意味している。 2.2,3,7,8-TCDDのUroDの阻害は、3,4,5,3′,4′,5′-HCBの約10倍強くおこり、毒性の強さがポルフィリン生成の酵素障害と極めてよく平行している。 3.ポルフィリン症プロトポルフィリン症は、末梢の赤血球が光照射により一重項酸素が発生することを確認し、これが光過敏症の原因物質であることを証明した。 4.【^(32)P】でラベルしたDNAにポルフィリンを加え光照射し、ピペリジン処理した後、電気泳動を行い、Maxam-Gilbertを併用することにより、光照射でポルフィリンから発生する一重項酸素が一重鎖のDNAのグアニンと特異的な反応をおこし、これがポルフィリン光照射と制ガン作用を解明する糸口を開いた。 5.ヘムオキシゲナーゼは酵素作用はα-オキシヘム迄で、α-オキシヘムπ-中性ラジカルを経て酸素が添加し、α-ベルドヘムを生じ、さらにこれに酸素が添加してビリベルジンを生ずる。 6.ヘムオキシゲナーゼ及びPBG-deaminaseのc-DNAのクローニングの実験を行っており、かなりの成果を得ているが、まだ完結していない。
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