1.先天性内反足の臨床的重症度を以下の方法で明らかにした。【◯!1】一定の初期治療への反応から、片側罹患例は男女とも比較的軽症であり、これに対して両側罹患例ことに女子例は比較的重症であった。【◯!2】X線計測上、初診時最大背屈側面像での所見が予後と関連していることが明らかになった。【◯!3】非手術的に治療を行い、3歳以上に達したものの臨床所見をみると、前項【◯!1】および【◯!2】で明らかになった要素の関与が証明された。【◯!4】種々の合併奇形を有するものについての調査を行い、一部特定の奇形症候群をのぞいては、今併奇形の有無と先天性内反足の重症度との関係は証明されなかった。 2.以上の研究経果をもとに、3種類の早期軟部組織解離術々式(後方解離術・後内方解離術・後外方解離術)について、手術対象となった症例の重症度・年令・治療経過などを明らかにしたうえで成績の比較検討を行った。後方解離術を行ったものには比較的軽症のものが多く含まれていたが、後内方解離術・後外方解離術を行ったものでは重症度はほぼ等しく、また他の要素については3群の間に大きな差異はなかった。治療成績をみると、後外方解離で最も良好に変形が矯正されていたが、一方対象に比較的軽症例が多く含まれていたのにかかわらず、後方解離による矯正には問題が多く残されていた。 以上の研究から、初期治療としてのギブスによる矯正をすすめながら、症例が夫々有する重症度を臨床的に明らかにし、二次的な骨・軟骨変形を生じないよう細心の注意を払いながら必要なものには軟部組織解離術を行うという現行の治療体系はおおむね妥当であると考えられる。一方、治療成績を左右する因子や治療成績の客観的評価法については未だ解明されておらず、今後更に検討が必要であると考えられた。
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