IS1の構造と機能に関する今年度の研究成果は次の通りである。 1.前年度に、赤痢菌染色体から1%から10%の塩基置換変異を持っIS1(iso-IS1)を繰り返し配列の中から分離する方法を述べたが、今年度にこれらのiso-IS1の転移頻度をfluctuation testによって調べたところ、それぞれのiso-IS1が異る転移能を持つことがわかった。また野性型IS1と異り両端に変異をもつものが得られたが、それらの転移頻度は著しく低下していた。この結果はIS1の両端が転移に必復であることを示している。 2.上記の方法はIS1ばかりでなく、他の繰り返し配列の分離にも有用であり、実際にS.sonneiの染色体から、新たに3種類のIS様DNAを分離した。いずれも両端に特異的な逆位配列と蛋白をコードしうる続み取りフレームが存在した。その中の一つ、IS600、は他のISのIS3の変異体であることがわかった。またIS600はIS3と同様挿入標的部位の3塩基対を重復させることがわかった。 3.IS1の両端のプローモーターは著しく弱く、結局強いプロモーター変異体はとれなかった。一方IS1の極性効果について前年度に引き続き、in vitro転写系により解析したところ、転写終結部位がIS1上の様々な部位い存在することがわかり、それらが強い極性効果を示す原因であろうと推定できた。 4.本研究遂行上で得られたプラスミド変異体を利用して、有用なクローニング・ベクターを作成することができた。またこれらを、熱測定という物理化学的手段によって解析し、DNAの微細構造を知るために有用な新たな手段となりうることを示すことができた。 5.また本研究に於て講入した備品を使用することにより、プラスミドR100がニードする接合伝達遺伝子群の解析を始めることができた。
|