この研究の目的は、計算機の新標準数体系を設計し、それに適合するソフトウェア及びハードウェア・アーキテクチャーを確立することであった。昭和58年度から3ヶ年にわたるこの研究の成果としてまず客観的に評価されたことを挙げれば、この研究に直接に関係する、研究分担者、浜田穂積氏の論文「二重指数分割に基づくデータ長独立実数値表現法【II】」情報処理学会論文誌第24巻第2号に対して情報処理学会より昭和58年度論文賞を授与されたこと、また日立製作所が中央研究所の紹介誌の表紙に浜田式表示数の特性を示す表を飾っていることがある。浜田方式の数を扱うハードウェアについては、ソフトウェアの基本的部分を7命令だけハードウェアで実現するものが試作された。その特徴の主要なものは次のものである、まず、どんなに大きい数も、ゼロに近い小さい数も表現できることである、これにより、計算中のオーバーフロー、アンダーフロー現象が発生しなくなった。つぎに数値表現がデータの長さに依存しないために、何ビットのシステムにおいても同じ規則によっているので大から小までの計算機、またその他のデジタル装置の間にデータ互交が成り立つことである。 浜田は日立製作所中央研究所に来社した多数の外国人研究者に、このハードウェアシステムを説明した。それらの研究者の中にはATT(アメリカ電信電話会社)ベル研究所長や「ジャパン アズ ナンバーワン」の著者 フォーゲル氏もいる。 この研究分担者 伊理正夫東大教授がコンピュータ関係の国際会議で直接質問をうけたことがたび重なるので、外国の研究者の間でも、この研究が注目されているということが伝聞としてあげられる。 研究成果報告書は3冊900ページになる、以上この研究は当初の研究計画を完遂できたものと自負している。
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