本試作研究の高速マグネトロン反応スパッターリング装置が仕上り設計通りの性能を在することがわかった。更に本装置は直流放電反応スパッターリング装置としても使用できることがわかった。更に我々は電子ビーム加熱蒸発法とサドル型イオン照射装置の両装置を組合せたイオン蒸着装置も合せて作り上げた。この3つの方法を用いて窒化薄膜の試作実験を行った。とくに、本試作研究の装置である高周波放電反応マグネトロンの装置については、諸パラメターを種々変えて窒化膜の最適条件を探した。すなわち、陽極、陰極の両電極間距離、投入高周波電力量および封入ガす圧力量のパラメターと付着基板上に付着する厚さすなわちデポジッションレイト(μg/【cm^2】/2h)を調べた。その結果4.5cmの電極間距離、高周波電力は250W、ガス封入圧力は5×【10^(-4)】から1×【10^(-3)】Torrの条件が最適な窒化薄膜が得られた。 上記の3つの方法で作製した窒化薄膜を東大原子核研究所のSFサイクロトロンの65MeVのα粒子ビームを用い粒子分析器によって組成分析を調べた。また、理化学研究所の線型リエアックの50MeV【Ar^(4+)】の重イオンビームを用いた前方反跳法によって同じく組成分析を行った。これらの実験結果からいずれの方法を用いた場合でも窒化膜が形成されていることがわかった。作製した窒化膜は窒化チタン、窒化ニオブそれに窒化アルミニュムで、窒化量は封入ガス圧力が低いほど、また投入電力が大きい程多く窒化されていた(高周波放電スパッターの場合)。 高周波放電スパッターおよび直流放電反応スパッターリングの両方法で得られた窒化膜は、表面層が水素元素が多く含まれ、一方のイオン蒸着法で得られた窒化膜は裏表とも、全体にわたって水素が含まれていることがわかった。今後の課題として、不純物の炭素と酸素の混入量が多く、無視できない量なので、ターボ分子ポンプ又はクライオポンプを用い、反応容器中にコールドトラップを有効に仂くようにして不純物を少なくする。
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