本研究は、加工性のよいモリブデン鋳塊を得るためにスカンジウムを添加して溶製する独自の基礎研究を拡大応用し、その実用化を図ろうとして行ったもので、得られた成果は次のとおりである。 (1) 非消耗電極連続アーク融解炉を製作、設置し、それによるモリブデン融解法を確立した。 (2) スカンジウムを添加して本炉により溶製したモリブデン鋳塊には、基礎研究により得られたスカンジウムの脱酸効果がよく保存されており、加工性が非常にすぐれている。 (3) 予備的に作製した合金中、非熱処理合金としてMo-0.5%V合金、内部窒化処理合金としてMo-0.1%Zr合金を選び、これらのそれぞれについてスカンジウムを添加して溶製し、いずれも加工性のよい合金鋳塊を得た。 (4) 純モリブデン、Mo-0.5%V合金については板材の圧延を行い、温間および冷間加工性のすぐれていることを確認し、加工材の機械的性質を調べた。 (5) Mo-0.1%Zr合金については板材および線材を作製し、両者につき内部窒化処理を行い、既知のTZM合金より高温強度のすぐれていることを示した。すなわち、加工時には容易に加工ができ、使用時には強度が高いというすぐれた特性が得られた。 (6) 最後に、これら材料の溶接性についても調べた。すなわち、電子ビーム溶接したビードの組織観察によると、粉末冶金材ではブローホールが生成するが、本系合金ではそれが一切見られず、ジルコニウムを含むものでは結晶粒が細くなる傾向にあることを見出した。 以上、基礎実験をもとに、中間工業規模でスカンジウムを添加して溶製したモリブデン合金鋳塊の加工性を調べて、そのすぐれていることを確証した。今後は、コスト等の点から一部代替元素の開発などが必要であろう。
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