1.エピクロロヒドリンゴム(ECO)の水架橋 アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)と触媒としてのジラウリン酸ジn-ブチル錫(DBTDL)を配合したECOは、70℃水中6時間で、網目鎖密度が5×【10^(-4mol)】/【cm^3】に達し、水架橋が可能であることが判明した。また、最大7.0MPaの引張強さという優れた力学強度を示した。この水架橋エラストマーの他に見られない特性は、高いECOの親水性による、44%にも達する吸水性にある。 2.塩素化ポリエチレン(CPE)の水架橋 CPEに含まれる塩素の反応性の低さのため、DBTDLを配合してもなお、架橋効率が低く、この系では十分な網目鎖密度、力学強度を得ることはできなかった。 3.クロロプレンゴム(CR)の水架橋 APS及びDBTDLを配合したCRは、3×【10^(-4mol)】/【cm^3】の網目鎖密度、10MPaの引張強さを与え、水架橋によりCRエラストマーを得ることが可能であることが分った。しかしながら、この系では、水によらないCRとAPSの初期加硫が避けられず、強度低下の原因となっている。 4.水架橋の総合的評価 多種のハロゲンを有する高分子、1-クロロブタジエン-ブタジエン共重合体、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、クロロスルボン化ポリエチレン、エピクロロヒドリンゴム、クロロプレンゴムについて、APSを反応させることにより、水架橋が可能となり、従来の熱加硫架橋体に匹敵する強度の水架橋高分子エラストマーを与えることが判明した。それらの水架橋反応の詳細な検討によって、それぞれの高分子に最適の反応条件を与えることが可能となり、更に、シリカを配合することによって、化学結合性の強い補強効果を得た。以上の結果、水架橋は、熱加硫によらぬ容易な加工手段を提供する方法として実用化され得るという結論を得た。
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