遺伝資源にかかわる情報管理システムについて、われわれは数値文字情報に関する限り、ほぼ理想的なシステムSIRA/GRを提案し、農林水産省等で実用化の見通しがついた。ところで遺伝資源にかかわる情報は、形、色、生態学的状況のように画像によるものがより本質的であるものが多く、またそうした情報は比較的簡単に得られ、それ自身多くの数値文字情報を内在している。そこでわれわれは、情報機器の近年の発展とあいまって、遺伝資源の画像情報データベースに関する基礎的な研究を本科学研究費のもとで過去3年間にわたって実施した。そして、遺伝資源に関する画像情報の蓄積、検索、解析ができ、文字数値情報も同時に扱えるシステムを試作し、以下の結果を得た。 (1)さまざまな遺伝資源の画像情報を含むデータを試験的に収集、記録し、検討した結果、画像の蓄積についてはアナログ方式によるレーザディスク装置に保存することが現実的であると判断した。(2)レーザディスク装置、画像処理装置、パソコン等の機器を組み合わせて画像情報も扱いうるハードウエアを構築し、これを用いて多様な情報の蓄積・検索・解析のためのソフトウエアを開発し、また(1)で収集し記録したデータについてこのシステムの試験運用をし、充分実用に耐える事を検証した。(3)デジタル化された大量の画像情報のさらに詳しい解析をするために高速大型計算機を利用して、形態計量学的、生態計量学的な画像解析アルゴリズムやソフトウエア・システムの開発を行ない、一部はほぼ実用化された。(4)育種現場や実際に遺伝資源を収集管理している立場からの画像情報の利用方法などに関する要望や意見をまとめ、画像情報検索解析技術に関する今後の展望を得た。(5)システムの説明書やマニュアル等を作成した。(6)(2)と(3)を結ぶこと、あるいは更に一般的ネットワークシステムについては、大量情報の転送とあいまって今後の大きな課題である。
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