ヘテロシス利用によるトウモロコシ【F_1】における高収量の実現は、作物の収量成立過程としての個体の発育・形態の結果である。したがって、【F_1】は理想的な生育を実現しているといえる。本研究はこのような観点から、【F_1】とその両親系統の発育・形態を比較、解析し、トウモロコシの理想生育型を明らかにすることを目的とした。また同時に、遺伝様式を解明し、その育種的制御の可能性について検討した。 解析の方法はトウモロコシの生育相モデルを基本とし、植物単位(群)の概念を用いた。その研究成果を以下の3編の論文にまとめた。 1.「雑種強勢発現機構の発育形態学的解析」 育成経過の明らかな日本産【F_1】品種とその両親系統を用いて、発育形態と収量(構成要素)の関係を明らかにした。その結果、【F_1】の多収性は分化穎花数の増大と、登熱歩合の確保による1穂粒数の増加によっていた。そしてそれは穎花分化期間に展開し、活動中心葉となる第3単位群の葉面積の増大により実現されていた。 以上のような多収性実現のために、単位群構成を育種的に制御するには、異なる草型の親系統を用いて、多様な草型の【F_1】を育成し、【F_1】における単位群構成の発現と収量性の関係を明らかにする必要性を指摘した。 2.「【F_1】における形態変化と収量の関係」 上記の指摘をうけて、遺伝分析に適した草型の異なるインブレッドを用いた、ダイアレルクロス【F_1】における単位群構成と収量形質の発現様式を解析した。結果は前記と同じく、第3単位群の葉面積増大が多収性に関与しており、理想的な単位群構成像が明らかとなった。 3.「発育形態形質の遺伝様式のダイアレル分析-予備的解析-」 そこで、上記ダイアレルクロス【F_1】のデータを用いて遺伝分析を行なった。単位群構成は正逆交雑間で差が認められ、単位群構成の大きく異なる系統間の交雑により、比較的容易に制御可能と予測された。
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