ハダニ類における薬剤抵抗性の急速な発達は、薬剤によるハダニ類の防除を困難にしており、理想的防除法として農薬と天敵の併用が望まれている。本研究はハダニ類の天敵のなかで、土着天敵の主要種、ケナガカブリダニの利用に関するもので、全国のリンゴ園・ナシ園・カンキツ園・茶園および施設ブドウなど、薬剤散布園と施設園芸における薬剤抵抗性カブリダニ個体の発現の実態と分布について調査した。次いで、採集・増殖させた薬剤抵抗性系統を用いてハダニ類の総合防除を成功させるための基礎的研究である。 1. カブリダニ科のうち、日本産の代表的な普通種の学名を再検討した。ケナガカブリダニはAmblyseius longispinosus(Evans)、ニセラーゴカブリダニはA.eharai Amitai et Swinskiが正しい。 2. 北海道のリンゴ園と関東地方のナシ園のケナガカブリダニは、今のところ薬剤抵抗性の発達の程度が低い。しかし、鳥取県のナシ園のケナガカブリダニは有機リン殺虫剤にかなり高い抵抗性があった。 3. 静岡県の薬剤散布茶園では、ケナガカブリダニが多発生し、カンザワハダニの生物的防除に有効に働いていることが明らかとなった。その理由は、茶園のケナガカブリダニは有機リン剤、カーバメイト系殺虫剤に極めて強い抵抗性を獲得していることによる。 4. 中国・四国・九州地方のカンキツ園や施設栽培ブドウより採集したケナガカブリダニ、ニセラーゴカブリダニ、コウズケカブリダニAmblyseius sojaensis Eharaの薬剤抵抗性には産地によって変異があることが判明した。ケナガカブリダニではサリチオン剤に対してかなり感受性の低い系統があって、ハダニの生物的防除に利用できる可能性があると考えられた。 5. 薬剤散布環境下におけるハダニと天敵カブリダニ類の相互作用系を記述するシステムモデルを開発した。
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