新補酵素ピロロキノリンキノン(PQQ)の発酵生産法について研究を行い、PQQの供給法として発酵法が最適な方法であることを示すとともに、PQQ生成量を向上させることができた。PQQはほとんどすべての微生物によってその培地中に生成蓄積されるが、なかでもメタノール資化性菌のいくつかが著量のPQQを生成することが明らかになった。良好なPQQ生産菌を見出すとともに、これを用いてPQQの生成条件の検討を行った結果、培地1ml中に最高約100マイクログラムのPQQが生産されるようになった。他のビタミンや補酵素の発酵法と比較しても収率的にもきわめて良好といえる。PQQの生産には無機元素のうち、マグネシウムが深く関係していて、マグネシウムの培地中の濃度を工夫することでPQQの生産性が向上した。 PQQの培地中からの単離、精製法についても検討した。培養後、細胞を除去して得られる培養液に直接イオン交換体を加えPQQを吸着させるか、または、イオン交換カラムに通すことによってPQQのみを特異的に単離することができた。PQQの脱着には塩化カリウムによって行うのが好ましく、溶出液中のPQQは、飽和塩化カリウム存在下で、pHを2に調節することで、粗結晶として得ることができ再結晶を1〜2度くり返えすことによって、純度の高いPQQとすることができた。 PQQの簡便で正確な酵素定量法を開発した。大腸菌の細胞膜をEDTA処理することで、含まれるグルコース脱水素酵素を完全にアポ酵素に転換したのち、外から加えられたPQQの量に対応して酵素活性が発現することを利用することで、高い再現性のある方法として広く利用できることを示した。本法を用いて、種々な生物試料中のPQQを測定した。
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