1.アリイン同族体のヒダントイン誘導体、5-alk(en)ylthiomethylhydantoin s-oxides(RHSO)は、中性水溶液中で非酵素的に分解して、ネギ類香味を生成する。これは、ネギ属植物においてアリイン同族体から、酵素alliinaseによって分解され、香味成分を生成する反応機構と酷似している。しかし、合成した5-(trans-1-propenyl)thiomethylhydantoin s-oxideから、期待された催涙性物質(z)-propanethial s-oxideは生成しなかった。さらに分解機構の究明が待たれる。RHSO混合物をネギ類香味前駆体として利用する場合、分解速度を調節するためにサイクロデキストリンを加えるとか、とくにpHを低くすることによって効果的に制御できることがわかった。なお、ミクロカプセルなどは今後の検討課題である。また、RHSOおよびその分解生成物の安全性についても慎重な検討が必要である。 2.RHSOのその他の応用的側面として、分解生成するチオスルフィネートのSH基との強い反応性から蛋白修飾剤としての利用、また低分子SH化合物で不安定な生体異物代謝中間体の捕捉剤としての利用ができることが証明された。 3.タマネギの加熱によって得られる独特の香ばしい風味を探索した。モデル実験も行い、タマネギ中の含硫アミノ酸、なかでもs-propyl-L-cysteineとD-グルコースとの加熱反応生成物、dipropyl mono-、di-およびtrisulfideと、とくに香ばしいにおいにはピラジン類が寄与した。 4.ギョウジャニンニクの揮発性成分の詳細な分析を行った。また、利用方法の一つとして、熱風乾燥または凍結乾燥により茎葉の乾燥粉末化を行い、真空パックにした。室温に4か月間保存してもそれほどフレーバーの変化はなく、品質保持の点で好結果を与えた。
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