本研究ではTNFの生産、精製に始まり、作業機序の解明、臨床応用への基礎研究までの広域な研究を行い、目的とした成果をあげることができた。家兎TNFを用いて作用機序の解明を行うことを目的とした。家兎TNFは精製法も確立され、アミノ酸配列も明らかとなり、抗家兎TNFモノクローナル抗体の作成にも成功しているために有利であった。1.悪性細胞選択的障害性 腫瘍細胞表面のreceptorの存在を考えて吸収試験などを行ったが、TNFの感受性とTNF消費量との間に相関性は認められず、TNF感受性細胞ではTNF添加により酸素消費量が著明に増大し、腫瘍細胞内のリソソーム酵素活性の上昇が認められた。ただし、in vitroでのTNFの細胞障害に必要な濃度はin vivoでの効果を示す濃度の10〜100倍量を必要とすることがわかった。 2.In vivoでのTNFの作用機序 病理組織学的所見からはTNFの出血性壊死はLPSのそれと酷似している。抗TNFモノクローナル抗体を用いることにより、TNFの作用を、polymyxin Bを用いることによりLPSの作用をブロックし、違いを証明した。TNFの作用機序として血管内皮細胞への影響が考えられるが、in vitroでTNFは低濃度でも血管内皮細胞の細胞間解離、分裂抑制を引き起こすことが判明した。in vitroでTNFに比較的抵抗性の細胞でもin vivoでは感受性のある細胞株と同様の出血性壊死が認められることからも、血管内皮に対する作用が考えられる。さらに肉芽組織においてもTNFが出血性壊死の組織変化を引き起こすことから、主たる作用部位は未熟な血管にあることが考えられる。TNF投与による生体内の変化としては、腫瘍局所に好中球、単球などの細胞浸潤が認められるが、他の臓器には病理組織学的にも障害性は認められていない。
|