本研究では、駆動装置も含めて体内に埋め込み可能な全置換型完全人工心臓の開発を目標に、制御の面で優れたプッシャープレート型人工心臓と空気駆動制御装置の開発を行ない、IN VITRO実験でポンプ機能の評価、動物、動物を使用して循環動態制御の実験及び完全埋め込み型人工心臓の最適駆動条件の評価を行なった。 体重60kgの日本人を対象に50-60kgの成山羊の胸腔内に入る一回拍出量65ccのプッシャープレート型ポンプを設計作製した。プッシャープレート型ポンプは、円盤状で血液側と空気側のハウジングの間にプレートが取りつけてあるダイアフラムをサンドウィッチ状に固定し、プレートを加圧することにより血液を押し出す仕組みである。なお、空気側ハウジングにホールセンサを取りつけて連続的にプレートの動きをモニターし、その信号を使用して一回拍出量の計算及びプレートの動きの適確な制御が行なえるようにした。また、血液中の酸素含有量のモニター及び末梢組織の酸素需要に応答する自動制御装置の開発を目的に血液側ハウジングに光センサを取りつけた。駆動制御装置はホール信号を基にして、左右夫々のポンプをFILL/EMPTYモードで駆動出来るようにした。また、完全埋め込み式システムの駆動方式の評価を行なうため、左右独自、同時又は交互に駆動できるオプションも導入した。現在までに、成山羊16頭、子牛7頭で心臓置換実験を行ない、システムの評価を行ない、流量特性、制御性及び操作性において満足する結果が得られた。長期生存例を得るための実験を継続している。また、完全埋め込み型全人工心臓の開発を目標にモータ駆動システムの設計開発を開始した。システムとしては一個のモーターを左右2個のプッシャープレート型ポンプで共有し、自然心のように左右同時に駆動できるメカニズムとしてシリンドリカルカムを設計開発して、現在ベンチテストを行なっている。
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