これまでは、ウロダイナミックデータと同時表示する下部尿路超音波像の経直腸リニア走査法で記録してきたが、今年度は探触子の直腸内插入や特殊検査台や座椅子などを必要としない経腹壁的セクタ走査法を同時表示システムの中に組み込んでみた。 本法は装置として横河メデカルシステムRT-3000を用い、周波数3.5MHzセクタ電子走査型探触子を使用した。経直腸リニア走査法で生じる可能性がある直腸内探触子の膀胱底部や前立腺に対する圧迫から解剖学的位置形態が損なわれるというような問題点がなく、被検者に対する痛みおよび不快感もなかった。しかも経直腸リニア走査法より広い範囲の膀胱および後部尿道の排尿時における動的変化を捉えることができた。正常男子例の排尿時エコーグラムをみると、膀胱収縮に伴い膀胱底部が立ち上がり、前立腺が下方に押し下げられつつ、膀胱頚部がクサビ状に開き、尿が尿道に流出する状態が捉えられた。膀胱に尿が多量に貯留しているうちは、膀胱全体像は捉えられないが、尿排出とともに膀胱が縮小するから後部尿道の全体像を観察することが可能であった。 従来、経腹壁セクタ走査法は解像力、再現性、描出の正確さに問題があるとして、発展が望めないとされていたが、近年、装置の改良による解像力の向上に伴い、非侵襲性と言う特色もあり、下部尿路の形態診断法として有用であったとする報告が見受けられる。問題点を挙げるとすれば検査体位が背臥位、側臥位に制限される点であるが、これは立位や座位では探触子と前立腺、尿道との位置的関係により、画像が不鮮明となるためである。しかし、この点に関しても装置の一層の改良により克服できる可能性がある。経膜壁的セクタ走査法による膀胱、尿道のエコー像とウロダイナミックデータとの同時表示システムは下部尿路機能の評価に有用であり、今後の発展が期待される。
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