YAGレーザーの眼科的な応用として熱凝固作用を用いた応用とQスイッチモードの光破壊作用を用いた装置の開発および臨床応用について研究した。試作したYC-1は主として熱凝固作用を有し、網膜神経線維層に作用を及ぼす事なく網膜深層、脈絡膜層に熱作用を引きおこす事が可能であり、血管新生黄斑症(老人性円盤状黄斑変性症)、脈絡膜腫瘍の破壊に有望であるとの結果を得た。またQスイッチモードは主として光切開装置として開発されYC-2にも低出力ではあるが熱凝固モードがあり、それによる家兎網膜の凝固実験結果は凝固巣の径は小さいものの基本的にはYC-1と同様の効果を得た。YC-1の臨床応用の結果は黒色の脈絡膜腫瘍の破壊1例に成功し、近年増加の傾向にある新生血管黄斑症に対してはかなり有望であるとの結果を得た。スポットサイズを縮小し、照準を改良したうえで好発部位である黄斑部への安全な照射を得るべく目下改造中である。YC-2の膜切開に於ける臨床応用は順調で、すでに後発白内障切開には約150例を越え使用したが、重篤な合併症にも遭遇することなく症例を増やしつつある。虹彩切開も可能でありアルゴンレーザーに比較して続発性緑内障において比較的成績が良い。アルゴンレーザーとの併用も試みられたが、それぞれの長所を生かした使用により適応の拡大と成功率の上昇が得られた。硝子体中の膜切開に使用可能であるよう細隙光を正面から入れながら切開可能なように改造を加えた。YC-2の基礎的実験も家兎を用いて施行した結果、浅前房に於ける角膜内皮への配慮と出来るだけ小エネルギー設定により切開するようつとめる事の必要性が示唆されたが、切開力については安定して良好であるとの結果を得た。今後は、YC-1については機器の改良、YC-2については臨床例の長期的な観察につとめ、適応の拡大と副作用の防止につとめる予定である。
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