我々の体液あるいは組織中に存在する生理活性物質の機能を把握し、その動態を明らかにすることは、これらの物質を生体内で正しくコントロールする手段に直結し、医療に大きく貢献するものである。 申請者らは複数の特異的な分析手段を有機的に組合わせることによって、生体成分の動態に関する情報を、同時に多角的に得ることを目的とし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と各標的生理活性物質に特異的な螢光検出法を組合わせ、更には生体試料の有効な前処理法を開発することを企画した。 対象としては、1.グアニジル基を有するペプチド、2.メルカプト基を有するペプチド、3.カテコールアミン及び関連化合物、4.ステロイド及び胆汁酸、5.ヒスチジン脱炭酸酵素、を選び、検討を加えた結果、各テーマについて次の成果を得た。1.アルカリ-ニンヒドリン試薬を用いて、血中におけるブラジキニン分解に関与する酵素活性の測定法を確立した(木下)。2.o-フタルアルデヒド試薬を用いる血中グルタチオンの測定法を確立した(二村)。3.エチレンジアミン法による各種生体試料中カテコールアミン及びL-ドーパの測定法を確立した(今井)。4.カルボキシル基の標識試薬として1-ブロモアセチルピレンを開発し、これを用いて胆汁酸サルフェートを測定した(辻)。また、水酸基標識試薬として9-又は1-アンスロイルニトリルを開発しこれを用いてコルチゾールあるいは胆汁酸サルフェートを測定した(南原)。5.ヒスタミンの螢光検出法を用いるヒスチジン脱炭酸酵素の活性測定法を確立した(大倉)。 以上の方法は、いずれもピコモルレベル以下で各成分の測定を可能とするものであり、炎症、肝機能障害、パーキンソン氏病、特発性浮腫、アレルギー等、広範な疾患の病態の把握や予後判定に応用されることが期待される。
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