1.目的: 患者の監視を高い信頼度で自動的に行ない、監視の過程で得られる医学的データの収集と解析により新しい知見を得ることもできるような実際的なシステムの実現を目的とする開発研究である。患者状態の監視にあたっては、生体から得られる時系列信号の処理と関連した種々の情報を総合した判断が要求される。これを実現できるシステムとして、マイクロコンピュータを中心とするシステムの開発を進めてきたが、その完成を期すのが本年度の目標であった。 2.胎児監視システム: 胎児心電図と陣痛曲線を主とする監視情報の収集・表示システムは一応の完成をみていたが、自動診断アルゴリズムを実時間で併行して動作させると完全な追従性が保証されなかった。これは、計算機システムの一部にどうしても処理を高速化できない部分が残った為で、ここではマイクロコンピュータを2台用いた分散型処理システムを構成することでこの問題を解決した。すなわち、一方がAD変換とオンライン診断を行ない、そのデータを受けた他方がデータの蓄積、オンライン検索、終了後のレポート作製を行なう。データの取り込み速度や量子化精度等は、生体信号の評価手法の検討を進めて決定し、オンライン診断アルゴリズムは医師による監視記録読み取り診断基準をプログラム化した。これにより、頭初の仕様を満した柔軟な構造の監視システムが実現でき利用可能なものとなった。 3.ICU監視システム: ミニコンピュータによる古くからの循環動態モニタシステムの改善が容易に行なえ、得られる大量のデータの蓄積と精細な解析とを汎用の計算機システムで実行できるように、この2つの計算機をネットワークとして結んだ。目的とする動作の確認とネットワークの利点の確認は行えたが使い勝手に問題が残った。 4.結び: 現在臨床の場での使用を始めており、システム評価を進めると同時に医学的に有用なデータの集積ができるものと期待している。
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