実際に臨床応用を目的としたリポソームの調製法を検討し、血中や目的とする臓器に到達するまで安定なリポソームの脂質組成として、ホスファチジルコリン(PC)、コレステロール(Chol)とジセチルホスフェイト(DCP)(4:5:1、モル比)の系を選び、均一な小さいサイズにするために超音波処理を2時間行った。酵素(インベルターゼ)を封入したリポソームをマウスに投与し、肝臓における活性の経時変化を細胞内局在を検討した。リポソームは【^(14)C】-トリパルミチンで標識し、その動態を同時に検討したところ、リポソーム膜は約2時間でリパーゼにより分解されPCや他の脂質の合成に再利用された。また、インベルターゼは約8時間を最高にリソゾーム内に蓄積され、その後徐々に失活する。リソゾーム内に取り込まれた酵素はタンパク質分解酵素によって分解されやすいために、その阻害剤(E-64)を含むリポソームを同時に投与すると、酵素活性がより長く肝臓に維持されており、長時間酵素活性を保持するのに有効な投与法であることが示唆された。 また、肝実質細胞ヘリポソームを標的化するのに糖脂質(ラクトシルセラミド、LacCer)やアシアロフェツイン糖鎖断片を添加してリポソーム表面を修飾した。標的化リポソームは肝実質細胞表面にあるガラクトース糖タンパク受容体を介して取り込まれることが単離肝実質細胞系で示された。また、リポソーム表面に露出したガラクトース残基が細胞表面の受容体と結合するためには、リポソーム膜の流動性が影響し、卵黄PCよりDMPCやDPPCからなるリポソームの方が膜流動性が低く硬いリポソームの方が効果的であることが判明した。LacCer-標識リポソームは対照リポソームより肝実質細胞への取り込みが約4倍増加した。
|