地震災害研究における最近の機械計測の発展にもかかわらず、社会的要請の向上の故に、また関連分野の多様性・広領域性の故に、機械計測のみでは資料充足はきわめて不十分である。本研究は、この点に注目し、地震災害事象のうち機械計測が困難ないしは不可能と思われる重要事象を識別・抽出するとともに、それらを系統的かつ客観的に評価するための調査法確立を主要な目的として進められている。すなわち、地震災害関連事象を『地震動事象』・『被災・影響事象』に2大別し、従来個別的に行われている各種調査法を改善・発展させ、また新規に調査法を組み立てている。地震動事象では、震度の高精度調査・計測資料との照合、既往(古い)地震の現時点調査等が主要課題となり、被災・影響事象としては、地盤・斜面破壊、建築物被害、室内・周辺環境変化、供給系支障、人間行動・死傷・災害後遺症、生活被害、復旧過程等々が取り上げられている。さらに、両者に共通するものとしてフェースシィートの基準化・調査票の体裁・レイアウトなどについても注意を払って研究を進めてきた。 研究一般の流れとしては、1)調査対象の選定 2)調査法試案作成 3)試行調査の実施 4)調査・解析法の確立を考えており、特に2)と3)の間では度々のフィードバックをかけて進めるべく意をもちいている。とりあげた主な地震としては、濃尾(1891)、三河(1945)、福井(1948)、宮城県沖(1978)、浦河沖(1982)、日本海中部(1983)の諸地震に加えてごく最近の長野県西部地震(1984)などがある。 この間、研究成果中間報告・分担者間相互協力態勢の強化等を主な目的として、関連課題毎に、ときに全体として数度の研究打ち合せ会をもった。これは研究全体の組織的かつ総合的進展にとってきわめて有意義であった。現在、成果報告の最終とりまとめの段階にある。
|