秋田県谷地地すべり地域の基盤地質構造のうち、成瀬川に沿った南部の褶曲は、背斜・向斜の軸面が非調和的であって層理に沿った開口性の割目等によって、地下浅部における重力滑動、即ち、古地すべりであることが明らかとなった。 崩壊地末端部の露頭においては、4つの重複した辷り層が確認され、各辷り層は厚さ約3〜4mでブロック化および擾乱を免かれていることから判断して、層面辷り又は岩盤辷りとして形成されたものであることが判明した。したがって、表層で区分した辷り地塊の区分は、浅い崩壊岩屑の表層すべりの遅速をあらわしているにすぎない。光波測量で確認した辷り速度最大値を示すブロックは中央部にあり、その方向はN70°Eである。 極微小地震観測は谷地地すべり地内で融雪期と、梅雨期の2度にわたって行い、アコースティックエミッションとみなされる波形を拈えることができた。この波形解析のため長野県地附山地すべりで拈えた波形との対比を検討中である。 山形県銅山川地すべり地では周辺の地質構造の不調和性から古地すべりの形態を把握し、肘析火山灰降下前の含礫泥流堆積物の存在を確認しえた。また、アコースティックエミッションを拈えるため、極微小地震観測器を別個に試作し、排水トンネル内の岩盤中で、数種の波形を検出した。しかし、地下に挿入したセンサーに土砂粒子が流動して摩擦音を発したものとも考えられるので、目下他地区のデータを集めつつある。 岩石の三軸圧縮試験は谷地・銅山川のサンプルについて行なったが、新第三系の岩石よりも層理面に沿うモンモリロナイト系粘土薄層にせん断力の著しく低いものがあって、これが地辷りを発生させる直接の原因となった事を確認した。
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