研究概要 |
1.洪水氾濫の解析については、従来より開発を進めてきた2次元非線形モデルにおいて、固定境界における非線形項の取れ扱い方を改良した結果、盛上、河川堤防近傍の流れをより妥当に表現できるようになった。次に、このモデルを大阪平野の洪水氾濫解析に適用し、5313出水(淀川最大流量12,000【m^3】/s)により枚方地点、或いは毛馬水門地点で淀川左岸堤防が決壊したと仮定した場合の氾濫解析を行い、氾濫水の侵入状況、湛水深の変化を詳細に調べた。その結果、氾濫水の拡がりは、地形によく対応したものであったが、淀川以東の大阪平野では平野を網状に流れる都市河川の堤防が平野をいくつかに分割する形となり、氾濫水の流動、湛水深の時空間的変化に大きな影響を与えることが示された。 2.高潮氾濫については、高潮・洪水氾濫水の衝突実験を5×5mのモルタル滑面仕上げの平面模型上で、幅10cmのゲートをコンピュータにより下降させて、氾濫をシミュレートして実施した。この実験より段波がお互いに干渉することなく通過し、前面で跳水等が発生せず、衝突前後で速度が変化しないことが明らかとなった。この結果から、1次元のBargers typeの氾濫水伝播モデルの平面への拡張によって現象が解析できるものと考えられた。 3.氾濫と都市水害については、人的被害を推定するために、家屋の全壊・流失をもたらす流体力のモーメントを氾濫水と強風による抗力、氾濫水が天井に達した時の浮力と摩擦力に起因するモーメントより評価する方法を提案した。この結果、高潮氾濫時の家屋の破壊には、風の影響が大きいことおよび実際にジェーン台風時の大阪の比花区内の対象地域の全壊・流失家屋数が推定できることがわかった。 4.氾濫災害と都市計画については、氾濫の歴史的変遷と都市の発達について検討するとともに、数値シミュレーションにより得られた最大湛水深、最大流量フラックスの値とその生起場所より災害発生可能位置を推定した。
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