研究概要 |
本研究では高濃度近藤物質の系統的研究を目的とし以下の点に重点をおいた。1.典形的物質の純良単結晶作成、2.新典型物質の系統的探策、3.制御された強力外場による精密測定、4.超低温における動的挙動の測定。1に関して高温高圧炉、2に関し超高圧炉、両者を兼ねてトリアーク炉、さらに周辺装置(電子ビーム熔接機,多目的グローブボックス)が稼動をはじめた。これにより種々の単結晶作成、新物質の発見がなされ、大略所期の目的を達すると共に現在も強力に研究を進めている。3は37Tまで発生可能はロングパルス強磁場装置が阪大(伊達)で稼動を始め、Yb【B_(12)】のエネルギーギャップの起源の研究等、有効性を発揮している。4.では超低温偏極中性子回折装置が導入された。しかしながら当初の分担者(石川)の逝去などの事態により計画が遅れ、新たな分担者(遠藤)のもとに現在本格稼動が可能となった。本研究の目的遂行のためには日米、日仏協力研究が利用されCe【Cu_6】の低温スペクトルの成功等の成果を挙げた。本研究により得られた物質面での成果の概略を以下に列記する。新ヘビーフェルミオ物質(CePtSi)、この種の物質として立方対称性をもつ初めての例(Ce【Cu_2】In)が発見された。Sm【B_6】に続く第2,第3のギャップ型異常物質(Yb【B_(12)】,CuをドープしたCe【Pd_3】が発見された。磁気転移を示す典型物質(Ce【B_6】,Ceプニクタイト)の精密測定により温度下降に伴いマグノン型励起からヘビーフェルミオン型励起への移行が見出された。Ce化合物として異常に高い磁気転移温度を示すCe【Rh_3】【B_2】の単結晶作成に成功し、またf-f直接混成モデルによる異常の解明に成功した。少数キャリア高濃度近藤物質(【Yb_4】【As_3】)やSm化合物としてはじめての高濃度近藤物質(【Sm_4】【As_3】,Sm【Sn_3】)を見出した。ウラン系のNMRの寿命測定により3dや4f系と異なる温度依存性が5f系物質には共通にかつ系統的に存在する(Up,【UAl_2】,【UC_(15)】,U【Be_(13)】)ことを見出した。
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