研究概要 |
本年度は、昨年度明らかにした砒化ガリウム(GaAs)およびシリコン(Si)基板上への弗化物混晶薄膜の単結晶成長条件をもとに、さらにこの弗化物薄膜上に結晶品質の優れたGaAsおよびゲルマニウム(Ge)薄膜をエピタキシャル成長させるための成長手法の開発と最適格子整合条件の検討を主に行なった。その結果、 (1) 低温で予め薄い膜を堆積した後、良好な結晶成長が期待できる温度まで昇温して成長する二段階成長法が結晶品質および成長層表面の平坦性の向上に有効である (2) 室温ではなくて、成長温度付近でGaAs,Geと格子整合条件が満される弗化カルシウム(Ca【F_2】)50%、弗化ストロンチウム(Sr【F_2】)50%の弗化物混晶膜を用いることが良い結果が得られる などを明らかにした。このようにして成長させたGaAs層を電界効果トランジスタの試作などによって評価した結果、 (3) GaAs層の電気的特性は引上げ単結晶GaAsに比べ大きく劣らずデバイスの実現が可能である ことが明らかとなり、本研究の初期目標は達成できたとともに、漏れ電流が大きいなどの問題点も明らかとなり、今後の具体的課題が示された。また (4) Si基板上に組成傾斜をもたせた弗化物混晶薄膜を成長することで格子定数を任意に制御でき、結晶性、絶縁性に優れた膜が得られる。ことを明らかにした。これは、目的とするデバイスがSi上にも作製できることを示しており、応用上極めて意義が大きい。 一方、GaAs,Geと弗化物薄膜界面特性に関しては、 (5) 同一超高真空中でこれらを連続成長することで大きく改善できることを明らかにし、同時に開発を進めてきた電子線による界面評価法を併用し、さらにその構造的、電子的検討を行なっている。
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