研究概要 |
1.昨年度末にVG5400質量分析計が納入され、本年度前半において、この装置の調整・基礎データの集積を完了した。質量分析計は、ほぼ期待に近い性能を出すに至った。 2.以下と平行し、レーザーによる岩石からの希ガス抽出装置を完成し、これを用い先カンブリア石英中に含まれるHe,Ne,Arの定量分析およびArの同位体比分析に成功した。 3.60年度後半から、VG5400質量分析計を用い、地球科学的諸試料の分析を始めた。その結果、下記の成果を得ることができた。 a).海底泥中の地球圏外物質に含まれる希ガスの分析: 二ヶ所で採集された深海底泥中から分離した磁性粒子につき、その希ガス組成・同位体比組成の分析を行った。この結果、この希ガスは【^3He】/【^4He】【〜!=】2.0×【10^(-4)】,【^(20)Ne】/【^(22)Ne】【〜!=】11.5の値をもつこと。さらに段階加熱実験から単一成分であることがわかった。この成分は、おそらくエネルギーが【<!〜】1MeV程度のSolar flareに含まれる希ガスだろうと考えられる。この知見は新しい発見で近く学術誌に発表を予定している。 b).ダイヤモンドのK-Ar年代測定: すでにわれわれは2年前に5ヶのザイール産ダイヤモンドを用いK-Arアイソクロン年代測定を試み、約60億年のアイソクロン"年代"を求めている。しかしこの"年代"は地球の年代(45.5億年)よりはるかに古く、実験上の誤り、具体的には検量の誤差によるものだろうと結論せざるを得なかった。今年度新たに導入したVG5400および全く新たに製作した試料抽出装置を用い、5ヶのザイール産ダイヤモンドのAr分析を行った。この結果は、前回の実験を完全に支持する結果となった。ダイヤモンドについて、K-Arアイソクロン年代が確立されたのは、これが世界で最初である。1986年7月ケンブリッジで開催される国際会議で発表する予定である。
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