1.前年度に合成したリボヌクレアーゼ(RNase【T_1】)遺伝子を大腸菌で発現させ、組換えRNase【T_1】及びその人工変換体を数種作成し、活性を測定した。その結果、1)残基番号71-73はPro-Gly-Serではなく、Gly-Pro-Serであること、2)基質認識部位である残基番号42-45のTyr-Asn-Asn-Tyr部分のTyrをpheに置換しても活性を保持しており、Pheの芳香環がTyrの芳香環と同じく、グアニン塩基をスタッキングにより固定していること、3)2つ並んだAsn43-Asn44のうち、Asn44→Ala44の変換が活性を著しく低下させることがわかった。 2.これらの活性と構造との相関関係を、前年度得たRNase【T_1】-2′GMP複合体結晶に基き解析した。71-73番目の配列がPro-Gly-Serでは、一定の分子構造が保持できず、活性が失われると推測された。又、基質認識部位を含む42-50番目の領域は、水素結合のネットワークにより運動性が低く、特にAsn44の側鎖がその構造の安定化に重要で、Ala44体ではこの部分の構造が保たれず、活性が低下すると考えられた。 3.溶原ファージφ80オペレータOR2に対応する19塩基対DNAを化学合成した。リン酸アニシデート法によるオリゴデオキシリボヌクレオチドの液相合成は、大量の試料を得る方法として適していることがわかった。 4.λファージのCro蛋白質をrecAプロモーターを持つ発現ベクターを用い、大量に発現させた。又、その2次元NMRを測定し、各シグナルをチロシン残基の重水素置換等により帰属した。λオペレーターのOR3部位の17塩基対DNA、及びそれとCro蛋白質複合体のNMRから、それらが強固な複合体を形成していること、OR3DNAがCkink兇構造をとること、更にオペレーターDNAとλCro蛋白の結合部位を明らかにした。
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