研究分担者 |
浜田 忠弥 新潟大学, 医学部, 教授 (40027313)
倉田 毅 国立予防衛生研究所, 部長 (50012779)
森本 靖彦 大阪大学, 医学部, 助教授 (00028424)
堂前 嘉代子 大阪大学, 微生物病研究所, 助手 (80127266)
山西 弘一 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (10029811)
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研究概要 |
当研究班は動物実験に伴う腎症候性出血熱,HFRS(流行性出血熱)の予防制圧を目的に組織され活動を行った。昭和59年度に2機関に夫々1名の患者発生を見たがそれ以降発生は停止している。これは発症状況の解析,分離病因ウイルスに関する多岐に渡る研究,さらに疑患者,疑汚染動物の血清学的診断を行い、その研究成果を研究報告書にまとめ、昭和56年文部省通達と併せて配布された本症の予防指針,診断の手引きを併記して各年度末に全教育研究機関に配布する他常々動物実験に関係する各界の人々に本症に関する啓蒙,予防策の周知に努力した成果と考えられる。動物実験に伴う本症の病因ウイルスはラット由来であるが、分離ウイルス諸株と原型株(セスジネズミ由来)を新生仔ラット,マウスに感染し、死亡率の推移,臓器内ウイルスの消長から前者はラット,後者はマウスにより強い病原性を示しその差異を明らかにした。HFRSウイルスはBunya virusに属し4型に分類されるが、抗原分析の結果それぞれの特質が明らかとなった。電顕像ではラット由来株は原型株と同様に表面格子様構造を有する球型粒子であるがそのサイズのピークが異なり、前者は尾部を有する粒子が存在し両者間の形態的差異が示された。HFRSウイルスは実験感染動物の臓器内に特に脳に長期に渡り検出され、感染性を保って血管内皮細胞に存在した。これは人材料の検索成績と同様であり、本症は全身の動静脈及び毛細管内皮のウイルス持続感染による炎症と周辺への波及という血管病との病態が明らかとなった。また最終発症例について当初より各種臨床検査値と抗体価の推移が経日的に追跡され臨床診断に有用な資料を集績しえた。然しながら発症機関に見られるラット相互関のウイルス感染伝播様式を感染実験では再現されていない。また血清検査で認められた実験ラットの低抗体陽性の意義は未だ明らかでない。これが本症研究上残された課題である。
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