児童・生徒の問題行動を個人の個体的側面とその背景となって種々影響を及ぼしていると考えられる環境的側面を同時にとらえて、それらの相互関係を考察することをねらいとして、研究対象を中学生とその父母、学校の教師、地域社会の一般人とし、問題行動及びその前兆指標と目される行動について調査を実施した。他方、上記の大数調査に対して、特徴ある事例についての追跡調査を進めた。これらの調査及び事例研究から、およそ次のような成果がえられた。 (1)中学生は主として学校の規則違反をより問題視することが明らかになったが、1年生と2・3年生との間には差がみられる。すなわち1年生は問題の行為に対してより厳しい観方をしているが、2・3年生になると容認するものが増えてきている。その間に意識・態度の変換があるということで、注目すべき結果であるといえよう。 (2)中学生の問題行動については、生徒自身と父母、教師、それぞれに観点が異なっており、問題行動観に差のあることがわかった。中学生は学校で決められている規則に違反する行為をより問題視するのに対して、父母の方は男女交際のあり方、対人態度、生活態度のけじめの無さをより問題視する傾向がみられた。一方、教師が問題視するのは、脅し、外泊、夜遊び、服装・態度の乱れなど、いわゆる非行・不良行為に相当するものであった。 (3)被害の調査結果では、様々の報告があったが、問題点は【◯!ア】生徒の答えと父母の解答にズレがあること、【◯!イ】被害後の処置が一般に不適切で、殆んどのものは適切な対処をしていないのは問題で、これらの理由を解明しなければならないであろう。 (4)事例の追跡研究からいえることは、家庭の人的構成・心理的結合の崩壊が目立つ。また、問題の行為に対する処置がまずいために、かえって予後を悪くしているので、家庭の指導を重視すべきであろう。
|